【B Lab 研究員紹介】No.3 長﨑徹眞さん
さまざまな業界の第一線でご活躍されているB Lab研究員をご紹介する「B Lab研究員紹介」シリーズ。今回は、今年度からB Labと「超SDGsラボ」という新たな枠組みで、人型ロボットPepperなどのテクノロジーを活用してSDGs達成に貢献する課題解決のアイデアを表彰する「STREAMチャレンジ」を推進されているソフトバンクロボティクス株式会社の長﨑徹眞さんに話を伺いました。
長﨑徹眞
(ソフトバンクロボティックス株式会社 マーケティング本部Humanoid事業部)
ソフトバンクロボティクス株式会社マーケティング本部教育事業推進室室長。哲学・臨床心理学を専攻したのち、コンサルティングファームにて、企業戦略立案、M&Aアドバイザリー業務に従事。テクノロジーを活用した探究学習の普及に尽力すべく2019年に現事業に参画。本業の傍らで、NPO支援に携わる。浄土宗教師。講道館柔道弐段。
Q. 趣味や普段から関心のあることは?
実家がお寺で、生まれた頃から「社会に貢献すること」を強く意識して育ちました。そのため海外のNPO支援を行う組織を友人と運営したり、大学まで柔道をした経験から、judo3.0というNPOでサポートスタッフとして活動しています。judo3.0では、法人立上げの支援、海外と日本の柔道チームの交流、海外チームの日本国内アテンド、日本人が海外に行くときの現地サポートなどに部分的に携わっています。
また個人的な話ですが、ブラジリアン柔術を趣味として始めました。自分の周りでも、かなり多くのビジネスマンがブラジリアン柔術にはまっています。現在は黒帯を目指して練習を重ねています。
Q. 超SDGsラボとは?
超SDGsラボとは、B Labと京都超SDGsコンソーシアム及びソフトバンクロボティクスが推進する、テクノロジーを活用して社会課題の解決に取り組み、社会実装しようとする個人のアクションを応援していくプロジェクトです。
今年度より超SDGsラボの枠組みの中でSTREAMチャレンジを実施することになりました。SDGs達成への貢献や、世の中の課題を解決したいと思う人たちが集うコミュニティの中に、子どもたちや学校の先生方にも入っていただき、学校教育の中の世界と外の世界を結ぶ接点を形成し、産学官が連携しやすい場所を提供できないかと思っています。
例えば、STREAMチャレンジでは、子どもたちにPepperを活用した社会課題解決のアイディアを実装、発表をしてもらいますが、その発表に対して、該当する領域で活躍している有識者の方にフィードバックを頂いています。学校の中では得られにくい有識者からのアドバイスから、「リアル」な学びを子どもたちに提供したいと考えています。こういった取り組みをより広域に展開することを目的のひとつとして、超SDGsラボを立ち上げました。
子どもたちの真摯な姿勢と作品のレベルの高さに、これまで何度も圧倒されてきました。「誰かの役に立とう」という高い視座を持ち、具体的な社会課題とPepperの機能とマッチさせ、解決策を実現するために膨大なプログラミングを組む姿勢を見て、毎回刺激をもらっています。チームで応募いただくのですが、その過程で壁に当たった時でも他のメンバーと協力し懸命に何かを作り上げる経験を通して、子どもたちは成長していきます。学校の先生からも「子ども達の変化に驚いた」という声を多く頂きます。互いに助け合う協働の精神を大切に、チームの中で一人一人の個性を生かし、自分の強みを発揮して、「自分でも活躍できる」と自信を持てる経験を積んで頂きたいです。そのための環境づくりに、この事業を通して貢献できたらと思っています。
Q. 面白いなと思ったアイディアはありますか?
一昨年度の最優秀を獲得した学校のアイデアです。「Pepperから何かをされるのって嬉しい」という経験から、その日に拾ったゴミの数をPepperに報告をすると、ペーパーが褒めてくれるというプログラムを作ったチームがありました。Pepperの機能とPepperとコミュニケーションをする人の気持ちを想像して上手に組み合わせ、学校全体のゴミ拾い活動を活性化することができたという内容でした。ツールを使うときに生じる気持ちや、それを上手に喚起させる着眼点、それを実現する際に伴う技術、どれも素晴らしいと感じました。
それ以外にも複数台のPepperをGmailで連携させ、一つのPepperが取得した情報をGmailで他のPepperに共有できる仕組みを構築したチームや、タブレットをリモコンとして活用しPepperを動かすゲームを作り、高齢者ドライバーのトレーニングに役立つ仕組みを作ったチームなども斬新でした。
Q. 今後の教育のあり方について
これまでの学校教育と、新しいツールやデバイスを使った新しい教育がうまく融合することが一番よい教育のあり方だと思います。知識をしっかりと身につける学びをうまく活用しながら、探究学習や課題解決型学習を行ったり、逆に探究学習の中で、教科学習の重要性を発見したり。従来の学習と新しい学習がうまく循環して、子どもたちのモチベーションが上がっていくような仕組みになることを期待します。
この中で、Pepperのような物理的なものの活用の仕方にも取組んでほしいと思います。置く場所の光の強さ、床の素材、近くのものの距離、人の導線など、Webなど画面の中での試行錯誤とは異なる点を考慮する必要があります。また、取り組みの中ではたくさん失敗をするので、「最初はうまくできない」ということを当たりまえにして、どんどんチャレンジする気持ちを持って欲しいと思います。
※「Pepper」はソフトバンクロボティクスの商標です。