Activity Report

【B Lab Interview】No.16 乘浜 誠司さん

2023.11.10

様々な業界の第一線で活躍する「B Lab研究員」を紹介するシリーズ。今月は、種子島全体の「ビヨンド・ゼロカーボンを目指すCo-JUNKANプラットフォーム研究拠点」としてスタートしたB Lab種子島のオーガナイザーで、iU専任教員の乘浜 誠司氏に話を伺いました。


乘浜 誠二(NORIHAMA, Seiji)
iU専任教員 / 株式会社ナレッジコンスタント 代表取締役 / 種子島自然電力株式会社 代表取締役 / 一般社団法人ESG投資基盤整備機構 理事 他

商社や監査法人を経てコンサルティング会社を設立。AIなどを活用したITシステム構築を含めた業務支援を行う。故郷である種子島では、太陽光発電に取り組む。2020年4月よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で専任教員に就任。

Q. B Lab種子島での活動を教えてください。

今年の夏も尋常ではない暑さに見舞われましたね。この異常気象やオゾン層の破壊といった環境問題は世界や日本全体にとって深刻な問題であり、温室効果ガスの排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」や、過去のストックベースでのCO2削減「ビヨンド・ゼロ」を実現することはますます急務となっています。

B Lab種子島では、まずは種子島から島全体のカーボンニュートラルを実現し、それを全国に広げるために、地域の企業やコミュニティと協力し様々な活動を行っています。地球環境を保護するだけでなく、持続可能なビジネスプラクティスとイノベーションを推進し、地域経済の活性化や新たなビジネスの創出に貢献することを心がけています。


サトウキビを活用したバイオ燃料

B Lab種子島の取り組みの一つとして、サトウキビから生産されるバイオ燃料(バイオエタノール)に注目しています。サトウキビの製糖プロセスから排出される黒いチョコレートのような「廃糖蜜」は通常廃棄物とされていますが、実は再生可能なバイオエタノールに変換できる貴重な資源なのです。バイオエタノールを燃料として使用する際のCO2排出は、植物が成長中に吸収したCO2の再放出であるため、温室効果ガスとは異なり、地球温暖化防止に貢献します。

種子島のサトウキビ生産量は年間約1500万トンで、その過程で発生する廃糖蜜は年間55万~60万トン。現在、この廃糖蜜は産業廃棄物として処理されていますが、再生可能な航空燃料(SAF)に変換する可能性を探っています。日本政府も2030年から、日本の空港で航空機に給油する燃料の1割を持続可能な航空燃料(SAF)とする方針を打ち出しており、種子島がその一翼を担えるのではないかと考えています。

 

二酸化炭素を活用した海ブドウ栽培
2つの目の取り組みは、CO2を活用した海ブドウ栽培です。種子島では温暖化の影響が顕著で、海の魚の取れる量が減少し、海藻もほぼ姿を消しつつあります。この問題にも対処するため、私たちは海ブドウ栽培に注目しました。

近年、日本ではCO2を回収して地下に貯留する技術の実用化が進んでいますが、種子島では、貯蔵ではなく「消費」に焦点を当てます。空気中からCO2を回収し、それを海水に溶解させ、海ブドウの養殖に有効活用できないかと考え活動を始めました。この取り組みによって、海中・海面付近にある生態系によって吸収・貯留される「ブルーカーボン」の創出を実現します。さらに、使用するCO2は、温室効果ガスの排出削減量や吸収量などをクレジットとして認証する国の制度である「Jクレジット」を活用しながら、地域の特産品である海藻の生産を促進し、地域経済の振興を目指します。

具体的な実験や実地実装に向けて、京丹後市の水産試験場から寄贈してもらった海ブドウを使用し、検証を行っています。CO2を活用した海ブドウ栽培では、通常の栽培方法よりも1.5倍速く成長することを確認しました。埋蔵されたCO2を活用して海ブドウを栽培し、その収益を上げることで、環境問題と地方創生の両方の課題に取り組むことができると考えています。

 

NTPC MAGICで発表
上記の活動を含め様々な活動を推進していますが、先日は、B Lab種子島のメンバーやiU生とともに、台北、新北市教育委員会主催の世界8ヶ国の学生によるカンファレンス『2023 NTPC MAGIC New Taipei City International Youth Forum』に参加し、種子島で行っている活動について発表しました。各国の大学は太陽光発電を学内に設備90%の電気を削減したり、今後の世界気温予測や学内のリサイクルの仕組みなど多岐にわたり、CO2削減こそ、「産官学の課題」と言う共通認識で閉会しました。

Q. 最後に一言メッセージをお願いします!

B Lab種子島では、「Jクレジット」を活用しながら、環境問題と地方創生の2つの課題に貢献する事業モデルの実施に向けて、今後も積極的に取り組んでまいります。

ビヨンドゼロカーボンの実現は種子島から変えていきます!

2023.11.10