B Lab 長崎 拠点便り
B Lab 長崎
B Lab長崎は、長崎市教育委員会協力のもとに公民館や地域センターを活用して、全世代に向けたデジタルシティズンシップ教育に取り組んでします。今回は、B Lab長崎オーガナイザーの中村星太さんに、最近の活動について伺いました。
B Lab 長崎では、ICT を利活用した公民館での新しい生涯学習活動支援のモデルを提案しています。
このプロジェクトは、令和5年度から長崎市三和公民館に約20台のタブレット端末(iPad) を導入し、利用者1人1台ずつ使える環境整備を行い、ICT を活用した市民向け講座をスタートさせてきました。
使われなくなった電子機器の利活用
端末導入の経緯としては、小学校で使用していたリプレース間近のiPadの処分検討の際に、不要となる端末を長崎市の大型公民館に一斉配布・管理したらどうかという動きが長崎市教育委員会の協議の中でありました。しかしながら、実装に至ったものの、公民館にはICT活用を推進する職員が配置されておらず、タブレット端末の管理が困難であったため、未使用のまま放置されていたのです。
公民館のICT環境整備
プロジェクトは主に、公民館のICT環境整備と、ICTを利活用した生涯学習活動設計という2つの面に分けて活動を行ってきました。
まず、ICT環境整備では、職員と端末の管理フローや利用規約などを定め、タブレットを活用したクリエイション講座の企画を進めました。職員によるOSのアップデートや学習目的のアプリのインストール方法といった基本操作のサポートを行いました。また、公民館を頻繁に利用する地域の高齢者でもデジタルを楽しく活用できるような創作活動の講座企画を検討し、近隣住民や職員の協力による試験的な動画編集のワークショップを実施しました。
実施により、参加者が作成したプロジェクトやデータの保存・削除の管理問題が発生することがわかり、職員とデータの取り扱いに関する議論を行ったのち、利用規約やガイドラインを定めることとなりました。さらに、端末の環境整備だけでなく、YouTubeを使ったアーカイブ配信の実施や参加住民のLINEグループチャットの運営など、ICTを活用したオンラインコミュニティの基盤の確立に向けた提案・実施も行いました。
ICTを利活用した生涯学習活動設計
次に、生涯学習活動設計の面では、ワークショップのデータを参考に、デジタルディバイドの解消やデジタルシティズンシップ教育を目的とした「シニア向け初めての映画づくり」講座の開発・実施に取り組みました。全4回にわたるこの講座は、「タブレット端末操作のスキル習得」、「スキルを応用したデジタル創作活動の実現」、「SNS での作品や情報の共有」という3つのフェーズを設けることで、ICTスキルを段階的に学習しながら、自分の活動体験や趣味、暮らしや地域を紹介するオリジナル動画を作って発信できるようになるものとなっております。最初は慣れない操作で戸惑う面も多かったですが、徐々にできるようになってきて、参加者同士で教え合うような関係も見られました。また、撮影のために外出が増えたりすることで、活動的になり、動画制作が楽しいというコメントを多くいただきました。
講座の最後にはinstgramを作成してお友達を追加してみたり、LINEで家族や友人に作品を共有するなど、デジタル社会への積極的な関与が見られる結果となりました。
文部科学省より第76回優良公民館として表彰!
ICTを活用したこのプロジェクトを通して、参加住民のアンケートやヒアリング調査の結果からは、「コミュニケーションやアクティビティの増加」、「楽しみ・喜び・刺激・安心感の提供」、「健康面への側面」、「居場所と役割の形成」、「意欲や社会満足度の向上」、「経済的な活動」 にポジティブな効果が見られたことがわかりました。また、今回実施した三和公民館は、他団体と協働・連携しながら、デジタル対応に関する講座を開催し、高齢者のデジタルデバイスの活用に貢献しているという点を評価され、文部科学省より第76回優良公民館として表彰されることとなりました。
このプロジェクトは、地域住民や近隣の社会教育施設からも多くの反響をいただいております。現在は三和公民館内で生涯学習活動目的のためのiPad貸し出し利用サービスの実装や、近隣施設での出張講座の実施などタブレット端末を活用した学習支援の展開を進めています。
今後もB Lab長崎は、各地の公民館や社会施設等と連携・協働し、ICTを活用した生涯学習活動支援の拡充を目指していく所存です。