Activity Report

超人スポーツプロジェクト~活動報告~

2024.1.16

超人スポーツプロジェクト

人間の身体能力を補綴・拡張する人間拡張工学に基づいて、人の身体能力を超える力を身につけ「人を超える」、あるいは年齢や障碍などの身体差により生じる「人と人のバリアを超える」。このような超人 (Superhuman) 同士がテクノロジーを自在に乗りこなし、競い合う「人機一体」の新たなスポーツを「超人スポーツ(Superhuman Sports)」と呼びます。

B Labの超人スポーツプロジェクトは、超人スポーツを社会により広く普及・浸透させることを目指し、積極的に社会実装に取り組んでまいりました。先日の国際学会国際学会SIGGRAPH ASIAではこれまでの功績が認められ、超人スポーツ”SlideRift”の関連研究が賞を受賞!

今回は、超人スポーツプロジェクトを推進するiU客員教員 安藤良一さんに、話を伺いました。


僕は、誰もが一緒に遊べる世界の実現を夢見ています。
そんな中行っているのが超人スポーツです。

その一つ、SlideRiftとは、既存車椅子を拡張させた全方向移動型の拡張身体です。前後だけでなく左右方向にも移動できる特殊な車輪「オムニホイール」を活用し、パドリングや重心移動など、多様な身体動作を用いて、人間にないドリフトという新たな運動能力を付与することで、身体的多様性を包摂する新たなスポーツ空間を構築しています。

また、最近はSlideRiftの新作、Seahareを開発しています。Seahareは使用者が身体的に行う重心移動などの運動と直感的に結びついて動作させることも可能であり、上肢および下肢の運動を制約せず、障がいの有無に関係なく操作することも可能です。加えて、実際に移動体に座らなくても、遠隔でスライドリフトを操作することが可能となりました。

もともと超人スポーツSlideRiftができてから、プロジェクトは主としてAXEREALとスライドリフト開発チームで行っています。僕の博士研究にもなった初の国内大会では、下肢状態の違いによらず、誰もが等しく参加、競技可能であることが示唆されました。

より多くの人々とともに、それこそ誰もが一緒に遊べるようにするために、現在は技術開発と社会実装手法の開発の二輪を主として回しています。例えば四肢の多様性の包摂などを目的とした技術開発はKMDと行っており、開発された成果物を用いた多様な人々を包摂する障害の生じない環境の構築に関する社会実装はiUで行っています。

社会実装は、単に技術があればできるものではありません。
そこに体験する人がいて、運用する人がいて、改善点を技術開発に展開し、フィードバックを現場に下ろす役割が必要になります。

今年の8月以降から、iU(電子学園)/B Labを主体として新たな取組をすすめてきました。それは、全国各地でイベントを開催し普及啓発活動を加速すると共に、より多くの人に持続的な機会を提供するために、開発した媒体の運用の一般化、品質の向上を目的としたマニュアル制作しています。

この度、国際学会SIGGRAPH ASIAにおいて、このSlideRiftの新作、Seahareを用いた新たな競技体験がBest Demo Award Voted by committeeを受賞しました。この競技体験実施に関する基礎的な運用手法の開発、実践的なマニュアル制作がiU/B Labと行った成果の一つです。こうした活動は現在、スポーツ庁「障害者スポーツ推進プロジェクト(障害者スポーツの実施環境の整備等に向けたモデル創出事業)」の一環として、PDSAJ様らと連携し行います。1月28日には、こうした活動を通じて得られた成果の検証、社会実装を目的としたイベント開催予定です。今後も我々は、先端技術の応用によって誰もが一緒に遊べる世界の実現を果たすべく、様々な挑戦を具現化していくつもりです。

2024.1.16